仮想通貨取引により得た利益には税金がかかりますが、総合課税という分類のため、利益の大きさによっては途方もなく高い税率となることがあります。
未だ発展途上の仮想通貨に対しては税制も整備しきれておらず、様々な問題点の解消のために法改正の可能性も叫ばれています。
今後どのような改正が見込まれるのか、現在の問題点と共に解説していきます。
目次
仮想通貨に対する税制は?総合課税に累進課税方式

仮想通貨取引ではその利益が課税対象となりますが、税区分は雑所得か事業所得です。
サラリーマンなどが副収入として取引した場合は、雑所得となります。
雑所得の課税方式は、「総合課税」です。
総合課税とは、給与所得などその他の所得と合算して課税されるもの。
雑所得の金額を、その他の所得と合算し、その総額により税額が計算されるものです。
ここで、実際に税金計算にかかわってくるものが「累進課税方式」です。
累進課税方式とは、所得額に応じた税率を表す指標です。
課税対象となる金額に応じて税率が定められており、所得が多ければ多いほど、税率が上がるというものです。お金持ちほど支払う税金が多いといいますが、それはこの累進課税方式が大きく関係しているわけです。
課税される所得税率は以下ですが、ここにさらに住民税10%が加算されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
総合課税と累進課税方式であることの問題点

累進課税方式では、総所得が一定の額を超えると税率も上がる仕組みとなっています。
仮想通貨取引では、時に膨大な利益を得ることがあります。
現に2017年には、億り人と呼ばれるように億単位の利益が出た人もいるとかいないとか。
億単位とはいかなくても、期待以上の利益が出て喜ぶのもつかの間、税金で半分以上持っていかれるという現実を突きつけられても不思議ではありません。
総合課税と累進課税方式であることの問題点には、以下のようなことが挙げられます。
- 仮想通貨間の交換、法定通貨への交換の度に課税される
- 累進課税のため税率が高くなる
- 役務、物品の購入、交換の都度損益計算が必要だが、取得原価を把握し課税対象額を計算することは非常に困難
- 損失分の繰り越しが翌年移行に持ち越せない
- 仮想通貨間の交換では、円に対する市場がないものもあり、円建てでの損益計算が困難
法改正の見込みアリ
上記のような問題点が取りざたされる中、ついに2018年3月、国会にて仮想通貨取引の税法について、議論されました。
参議院、藤巻健史議員は、以下の趣旨で仮想通貨税率改正を提案しています。
「ブロックチェーンの技術と市場を育て、税の公平さを図るためにも、仮想通貨の利益は申告分離課税であるべき。今後若者が喜んで納税してくれる税制に改正しなければならない」
ソースはコチラ(リンク先の下側)
今後議論を進め、この提案が現実的になることを期待したいものです。
http://vc.morningstar.co.jp/000577.html
夢の税制改正とは?

仮想通貨に対する税金の法改正については、これから議論が深められることになります。
現在の税制の問題点を解決するためには、以下のような方法が考えられます。
- 仮想通貨間の交換には税金をかけず、日本円に換金したときのみ課税する
- マイニングにより取得した仮想通貨の課税は、日本円に換金時とする
- 課税方法をFXと同様の申告分離課税とし、一律20%の税率とする
- 損失分については、3年間の損失繰越を可能とする
- 取得費が不明な場合は、売却額の5%を取得費とみなす
現在の課税方式では、仮想通貨から法定通貨への変換、仮想通貨から仮想通貨への変換、どちらも利益がでれば課税されます。
例えば、「日本円→BTC→ETH→日本円」という取引の場合、「BTC→ETH」「ETH→日本円」の部分で2回課税されることになります。
その度に日本円換算して利益を計算する必要があります。
しかし、仮想通貨は世界各国に取引所があり、扱う仮想通貨の数は数百とも言われており、中には日本円に換算できないものもあるわけです。
そうなると、日本円に換算して損益計算をするということは困難極まりないわけです。
このような点から、仮想通貨取引による課税を基本的に「日本円に換金したときのみ」とすることは、大きなステップとして期待されます。
もう一つ、重大なポイントは「申告分離課税」です。現在の総合課税では、仮想通貨により利益のために尋常でない税率となる可能性があります。
しかし、申告分離課税であれば、給与所得に関してはこれまで通りの税率、仮想通貨取引に関しては、どれだけ利益が出たとしても一律20%の税率ですむわけです。
このような夢の改正実現を期待して、今後の協議の進捗状況にアンテナを張っておきましょう。
FXも総合課税と累進課税だった!

現在、株やFXは申告分離課税で、その税率は利益の大小にかかわらず一律20%です。
実は、FXに対する課税にも歴史があり、2012年までは現在の仮想通貨と同じ「総合課税の累進課税方式」が採用されていました。
総合課税では、その他の所得と合算して課税され、累進課税方式により利益が大きくなればなるほど税率が上がりますので、場合によっては総所得の半分以上が税金として持っていかれるという事態にもなったわけです。
しかし、その後の法改正により申告分離課税として取り扱うことに決まり、どれだけ大きな利益をあげても、その利益分に対して所得税15%、住民税5%の合計20%の税率に統一されています。
かつてFXが流行り出したばかりのころには、税制が後手後手で追い付いていけない部分があり、現在の仮想通貨取引もこれに似たような状況であるといえます。
しかし、このFXに対する税制の動きを考えれば、今後仮想通貨取引に係る税制も、改正の可能性に大きな期待をせざるを得ません。
現に国会でも議論となったほどですので、近い将来大きな動きがあるのではないでしょうか。
改正後の期待
2017年まではその人気は右肩上がりだった仮想通貨市場も、現在はピークを越し、通貨の価値も落ち着いています。
市場をさらに活性化させるためにも、誰もが扱いやすい税制とすることは必要ではないでしょうか。
もし仮想通貨取引の税制が改正され様々な問題点が解消されれば、新たな参入グループも期待できます。
これまでは、高額となる税金を警戒していた投資家も、税金の壁がクリアできれば大口投資に参入してくる可能性があります。
まとめ

仮想通貨取引に対する課税方式は、総合課税で累進課税方式です。
そのため、ほかの所得額と合算し高額な税金をかけられるケースが多いです。
加えて、仮想通貨取引での損益計算が複雑難解となることが多く、これからの仮想通貨の取引市場の活性化に影を落としています。
そのような中、国会でこの問題について議論されるなど、法改正への明るい光が見えてきました。
かつてのFXと同じ様に、仮想通貨は未だ発展途上、税制も整っていない面がありますが、これから随時改正される可能性が高いです。
常にアンテナを張ることを忘れず、情報収集に励みましょう。