話題沸騰中の仮想通貨、価格高騰により多額の利益を得た人も多いといわれています。
一方で、投資にはつきものである損失が発生することも否めません。
仮想通貨で得た利益には税金を支払う必要がありますが、損失が発生したときには利益と相殺することができるのでしょうか?
今回は、仮想通貨にかかる税金について損益通算ができるのかどうか?詳しく説明していきます。
目次
仮想通貨にかかる税金の確定とは?

仮想通貨には税金がかかるといわれますが、これは正確にいうと「仮想通貨取引において得た利益に対して税金がかかる」という意味です。
利益とは、仮想通貨を購入のために支払った金額と、利益確定をした時の金額の差額です。
もちろん利益確定したときの金額の方が大きければ、「利益」、小さければ「損益」となります。
利益を確定せず、保有しているだけでは含み益があっても税金はかかりません。
それでは、この利益確定とはどのようなことを指すのでしょうか?
仮想通貨を円に換金したとき
手もちの仮想通貨を売却し、日本円に換金したときに、利益確定となります。
仮想通貨を購入したときよりも値上がりしていれば、利益がでます。
仮想通貨で物を購入したとき
仮想通貨を使って買い物をすることも可能です。
まだまだ数は多くないものの、量販店のビックカメラや飲食店などでは、仮想通貨での決済を受け付けています。
今後この流れは広がっていくのではないでしょうか。
ここで気を付けたいことが税金です。仮想通貨で支払いをすると、その時点で利益確定となるためです。
他の仮想通貨に変換したとき
手持ちの仮想通貨を、他の種類の仮想通貨に変換すると、その時点で利益確定となります。
仮想通貨→仮想通貨→法定通貨など、交換するたびに税金がかかることを忘れないようにしましょう。
仮想通貨にかかる納税は確定申告で

仮想通貨取引によって得た利益には税金がかかります。
これは、自己申告となり毎年2月から3月に確定申告を行います。
ただし、仮想通貨取引を行っている人は全員確定申告をしなければならないということはありません。確定申告が必要な場合は以下です。
お給料が主な収入で、副業としての仮想通貨取引にて利益が20万円以上
サラリーマンのように源泉徴収されている「給与所得」があり、副業として仮想通貨取引を行っている人は多いかと思います。
この場合、副業としての仮想通貨による所得が20万円以上の時に、申告の義務があります。
学生でも、もしアルバイト代が多く源泉徴収されており、さらに仮想通貨取引を行っていれば同様です。
仮想通貨取引だけが収入で、利益が38万円以上
収入は仮想通貨取引による利益だけ、または、アルバイトやパートをしていてもその収入が65万円以下、つまり「給与所得」がゼロとなる人で、仮想通貨の利益が38万円以上の時に、確定申告が必要になります。
仮想通貨の利益は雑所得

税務上の所得は、その内容により様々に分類されています。
給与所得、事業所所得、退職所得、譲渡所得、一時所得、利子所得、配当所得、不動産所得、そして、「雑所得」です。
雑所得とは、年金や恩給などの公的年金等、非営業用賃金の利子、原稿料や印税、講演料など、他の種類のどれにも属さない所得が対象です。
例えばサラリーマンのように生計のためには本業を持ち、その傍ら、仮想通貨取引を行っているような場合は「雑所得」です。なお、仮想通貨取引で生計を立てているとなれば、「事業所得」です。
雑所得の特徴

雑所得は「総合課税」です。
「総合課税」とは、「給与所得などその他の所得と合算し、税額計算する」ものです。
例えば、給与所得(給与所得控除後の金額)500万円のサラリーマンが仮想通貨取引を副業として始め、2000万円の利益をあげたとすると、
となります。
そうなると、
「仮想通貨取引で損益が出た時には、給与所得とプラスマイナスを相殺することができるのは?」
と思いますよね。
残念ながら、その答えは NO です。
「仮想通貨による損益は、他区分の所得との損益通算はできない」
という決まりになっています。
仮想通貨での損益については、あくまでも「利益がなかった」という位置づけとなり、「雑所得ゼロ円」で申告することになります。
例を挙げて考えてみると、
給与所得(給与所得控除後の金額)500万円、仮想通貨取引で100万円の損失の場合、雑所得は「ゼロ円」として計算されます。
総所得額 = 500万円+所得ゼロ円 = 500万円
このように、仮想通貨取引で利益を得るとしっかり税金を取られますが、その損失に対してはあまり考慮されることがなく、現在の仮想通貨に対する税制はかなり厳しいと言えるでしょう。
雑所得内での損益通算は可能

雑所得とその他の所得は損益通算ができないと述べました。
しかし、雑所得内であれば、損益の通算が可能です。これは「内部通算」と呼ばれます。
つまり、仮想通貨取引で、利益と損失が両方出た場合、プラスマイナスを相殺して、雑所得の所得金額を算出することができるのです。
例えば、ビットコインの損失が100万円、イーサリアムの利益が200万円あった場合には、
となり、節税が可能となります。
仮想通貨による損失は、翌年への繰り越しができない

雑所得内での「内部通算」は可能ということがわかりましたが、実は損失分の繰り越しは認められていません。
例えば、同じ投資でも、FXや株式所得では「繰越控除」が認められています。
これは、今年の損失分を翌年以降に繰り越し、3年間にわたり利益と相殺して所得総額を減らすことができるという制度です。
仮に、千万単位の損失が出たとしましょう。
その損失額は翌年以降3年間繰り越しが可能で、給与所得などと相殺できます。
毎年少しずつ相殺していけば、3年間節税が可能となるというメリットがあります。
しかし、仮想通貨取引においてはこれが認められていないのです。
損失があった場合は、雑所得ゼロとして申告し、給与所得などの所得税は通常通り課税されます。
実は、FXや株式所得は他区分の所得との損益通算も認められており、全体の課税対象額を減らし節税が可能となっており、それと比べると仮想通貨に対する税制は大変厳しいといわざるを得ません。
しかし、以前FXが流行り出した当時は、今の仮想通貨と同じ様に雑所得に分類され、高い税金に悩まされたという歴史があります。
仮想通貨もまだまだ発展登場であり、今後の税制改革などが期待されます。
まとめ

仮想通貨取引の人気が高まり、億り人と呼ばれる高額な利益を得た人もいます。
しかしその裏で、投資につきものである損益を被る人も少なくありません。
仮想通貨取引での利益は、雑所得に分類され、その税制はなかなか厳しいものがあります。
損益が発生した場合、雑所得内での内部通算はできますが、ほかの所得との損益通算はできません。
また、損失を翌年以降に繰り越すこともできない決まりです。
仮想通貨取引の損失は、
「その年の雑所得内でしか損益通算することができない」
ということを覚えておきましょう。