仮想通貨取引を行うにあたり、忘れてはいけないものが税金です。
仮想通貨で利益が出たが税金が高くて参った!という方も多いのでは?これは、仮想通貨にかかる所得税が総合課税だからです。
えっ!投資にかかる税金って分離課税ではないの?という方、仮想通貨に関する税金について、理解を深めていきましょう。
目次
所得税の区分

給与などなんらかの所得を得た時に支払う税金が所得税です。
厳密にいうと、収入から必要経費を差し引いた利益分が所得となります。
仮想通貨で考えると、100万円で購入したビットコインが値上がりし200万円で売却できたとすると、100万円が利益となり所得税法上の所得となります。
所得はその内容により複数に分類されています。
一旦分類した所得の金額をひとまとめにして税額を計算するものを「総合課税」と言います。ほかの所得とは合算せず分類したまま税額を計算するものを「分離課税」と言います。
総合課税の対象となる所得
- 利子所得(分離課税に該当しないもの)
- 配当所得(分離課税に該当しないもの)
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 株式、建物、土地をのぞく譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
総合課税には以下のような特徴があります。
- 原則的な課税方法
- 累進課税方式を適用
- 一部の所得について損益通算ができる
分離課税の対象となる所得
- 利子所得(分離課税に該当するもの)
- 配当所得(分離課税に該当するもの)
- 退職所得
- 山林所得
- 株式、建物、土地などの譲渡所得
分離課税の大きな特徴には以下の2点があります。
- 所得額にかかわらず税率が固定されている(所得税15%、地方税5%)
- 他の所得との損益通算が認められない
例えば、退職金が入った、家を売却したなど、一時的に得た所得額が大きい場合、総合課税とすると所得税額が高額となってしまいます。
これを避けるために分離課税とし一律の税率ですむようにしています。
分離課税とすることで総合課税と比べて税率が低くてすむ可能性があります。
仮想通貨取引による利益は総合課税

さて本題の仮想通貨取引による利益ですが、これは「雑所得」に分類されます。
上記のように、雑所得は「総合課税」の対象とされています。
総合課税の所得税率計算方式は累進課税方式がとられ、収入額によっては5%から最高45%とかなり高い税率が設定されています。
これに住民税10%が加算されますので、利益の半分以上を税金として支払うというケースもあります。高額の利益を得て喜ぶのもつかの間、この高い税率が思わぬ落とし穴となっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
その他、現在の税法による問題点は、以下のようなことが取り上げられています。
- 仮想通貨間の交換、法定通貨への交換の度に課税される
- 役務、物品の購入、交換の都度損益計算が必要だが、取得原価を把握し課税対象額を計算することは非常に困難
- 損失分の繰り越しが翌年移行に持ち越せない
- 仮想通貨間の交換では、円に対する市場がないものもあり、円建てでの損益計算が困難
仮想通貨も分離課税に!?

そこで、多くの投資家が話題としているものが「分離課税」です。
仮想通貨は世界中でその人気が高まっており、2017年には億り人と呼ばれる高額な利益を得た人も多いといわれています。
しかし、利益が多ければ多いほど支払う税金の額もけた違いの額となるため、うっかりするとその税金を支払うことができないという状態に陥る可能性もあります。
もしこれが「分離課税」であれば、利益の額にかかわらず一律20%の税金となり、税額計算も容易になることから、多くの投資家の間で分離課税への移行が期待されています。
実際に、2018年3月、国会においても仮想通貨取引の税法について議論がなされています。
参議院、藤巻健史議員が仮想通貨税率の改正を提案しました。
「ブロックチェーンの技術と市場を育て、税の公平さを図るためにも、仮想通貨の利益は申告分離課税であるべき。
今後若者が喜んで納税してくれる税制に改正しなければならない」という内容です。
麻生太郎財務大臣も仮想通貨の税率改正に前向きといわれています。
現在は分離課税のFXもかつては総合課税だった

さて、分離課税として認められている投資というと株式やFXがあります。
これらは、「所得の額が大きくなりがち」「恒常的な所得ではない」「金融商品である」などという理由から、分離課税とされされています。
実は、FXに対する課税にも歴史があり、2012年までは現在の仮想通貨と同じ「総合課税」で「累進課税方式」が採用されていました。
総合課税ではその他の所得と合算して課税され、累進課税方式のため、場合によっては総所得の半分以上が税金として持っていかれるという事態が起こっていたのです。
しかし、その後の法改正により申告分離課税として取り扱うことに決まり、どれだけ大きな利益をあげても、その利益分に対して所得税15%、住民税5%の合計20%の税率に統一されています。
かつてFXが流行り出したばかりのころには、税制が後手後手で追い付いていけない部分があり、現在の仮想通貨取引もこれに似たような状況であるといえます。
このFXに対する税制の動きを考えれば、今後仮想通貨取引に係る税制も、改正の可能性に大きな期待をせざるを得ません。
もし仮想通貨取引の税制が改正され様々な問題点が解消されれば、高額となる税金を警戒し仮想通貨への参入に慎重であった投資家も、大口投資に参入してくる可能性があります。
そうなれば、市場はますます潤い活性化されるのではないでしょうか。
ただ、税制改革が1年2年で完了するということはありえません。
FXの歴史を振り返ってみると、2000年前後にFX市場が動き出し、その後2005年に業者登録を義務とする金融先物取引法が改正されました。
2009年投資家の保護のため、信託保全の義務化が図られ、その後2012年に分離課税に移行となっています。
仮想通貨に関してもまずは投資家の資産保護が最優先です。
仮想通貨という独特な性質上、ハッキングによる通貨流出が大きな問題ともなっており、金融庁が各取引所を運営する業者に随時業務改善命令を提示している段階です。
投資家の資産保護体制の構築が完了すれば、次には税制改革が具体的に論議される段階となるのではないでしょうか。
もちろん、仮想通貨はこれまでの金融商品とは性質が大きく異なることから、既存の税制で同じように扱ってよいかという問題もあり、慎重に進めるべき議論となるでしょう。
まとめ

仮想通貨に対する現在の税制には、様々な問題があります。
しかし、仮想通貨自体が新しいビジネスであり、その市場はもとより税制も発展途上の段階と言えるでしょう。
現段階では総合課税のため所得額が高くなればなるほど税率が上がり、予想以上の税金を取られたというケースも少なくありません。
しかし現在は分離課税とされているFXも当初は総合課税から始まりました。
現在の仮想通貨に対する税制は当時のFXの状況と似通った状況にあり、今後税制改革が進む可能性が期待できます。
分離課税として認められれば、一律20%の税率となるため、より参入しやすい市場として活性化されていくでしょう。