仮想通貨取引は、インターネットさえあれば誰でも始められることから、大きなブームとなっています。
投資の一つであることからメリットデメリットはありますが、加えて忘れてはいけないことが税金です。
今回は、仮想通貨の税金に関する注意点をまとめてみました。
目次
注意1 仮想通貨に係る税金は「総合課税」

仮想通貨取引で利益を得るとその利益は所得となり、所得税の対象です。
所得税はその内容により10種類に分類されていますが、仮想通貨利益による所得は雑所得に分類され、総合課税となっています。
総合課税とは、一旦分類した所得の金額をひとまとめにして税額を計算するものです。
例えば、サラリーマンが副業として仮想通貨取引を行っている場合、給与所得と仮想通貨による所得の合計金額を基準に税率が決まり、税金額が計算されます。
この時使われる税率は、累進課税方式により、所得額が多ければ多いほど税率が上がる仕組みになっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
例えば、今まで給与所得500万円のみがであったところ、今年仮想通貨で500万円の所得があったとしましょう。
上記の表を見ると、500万円の税率は20%ですが、合計1000万円の税率は33%となっています。
一定の所得額を超えると税率が上がるようになっており、最高45%という高い税率がかけられることもあります。
仮想通貨で利益を上げ喜ぶのもつかの間、税金で半分が消えた!ということも少なくありません。
注意2 仮想通貨の課税のタイミングは、日本円に換金したときだけではない

仮想通貨取引では、利益が出た時に課税されることはご存知でしょう。
しかし「利益が出たとき」とは、「日本円に換金して利益を得た時」だけではありません。
うっかりすると見逃してしまいそうなタイミングでも、実は課税対象となっていますので注意が必要です。
具体的なタイミングとしては、以下の3つがあります。
仮想通貨を円に換金したとき
手もちの仮想通貨を売却し日本円に換金したときに、利益確定となります。
仮想通貨を購入したときよりも値上がりしていれば、利益がでます。
例:100万円で購入した1BTCを130万円で売却⇒30万円の利益に課税
仮想通貨で物を購入したとき
仮想通貨を使って買い物をすることも可能です。
まだまだ数は多くないものの、量販店のビックカメラや飲食店などでは、仮想通貨での決済を受け付けています。
含み益の出ている仮想通貨を使って買い物をしたとき、買い物が実現した時点で利益確定となりますので、その含み益分の金額は課税対象となります。
他の仮想通貨に変換したとき
手持ちの仮想通貨を他の種類の仮想通貨に変換すると、その時点で利益確定となります。
仮想通貨→仮想通貨→法定通貨など、交換するたびに税金がかかることを忘れないようにしましょう。
例:100万円で購入した1BTCを130万円に値上がりした時にEHTに交換⇒値上がりした分の30万円に課税
注意3 税金の申告は「確定申告」で

仮想通貨取引に係る納税は、確定申告により行います。
お給料をもらっているサラリーマンは、手元にお給料が入った時にはすでに税金が引かれているため、「自分で申告する」という感覚があまりないかもしれません。
しかし、仮想通貨取引で利益を得たら、自分で確定申告を行い納税をするのです。
確定申告は、当年分の所得に対して翌年2月から3月に管轄の税務署にて行います。
一年間でどのくらい利益が出たのか、それに対する税金はいくらかを計算し納付します。
あくまでも自己申告ですが、自己申告だからと言って申告をしないと「無申告」として罰金や追徴金が課せられますので、必ず申告しましょう。
税務署や国税局が取引所や銀行に情報開示を請求することは容易です。
注意4 利益額によっては、確定申告の必要なし

仮想通貨取引による利益は収入ですので、所得の一部として税金を支払う義務がありますが、その利益額によっては税金の支払が免除となるケースがあります。
確定申告がどのようなケースで必要なのかが国税庁により定められており、これに当てはまる人は確定申告を行う義務があります。
この中に、
「給与を1個所から受けていて、かつ、その全部の給与が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額の合計(給与所得、退職所得を除く)が20万円を超える場合」
と記されています。
サラリーマンが副業として仮想通貨取引を行っている場合は、まさにこのケースに当てはまります。
もし、仮想通貨取引による利益が20万円以下であるなら、確定申告の必要がない、つまり仮想通貨の利益分に対して税金を納める必要はないということになります。
学生や主婦など、「働いておらず、仮想通貨利益だけが収入」という人もいるでしょう。
そのような人は「収入が雑所得のみ」という分類になります。
この場合には、「公的年金等の雑所得の金額から所得控除を差し引くと残高がある」というときにのみ、確定申告の必要があります。
所得控除とは、個々の家族構成や個人的事情の違いを考慮し課税の公平性を図るためのもので、所得額からいくらかを差し引いて課税対象額を減らすというものです。
医療費控除、社会保険控除、扶養控除等全部で14種類があり、それぞれ適用となる要件が定められていますが、その中で、要件は一切なく全ての納税者が対象となる控除が「基礎控除」です。
基礎控除は「一律38万円」です。
給与所得のない学生などが仮想通貨取引で38万円の利益を出したとすると、雑所得が38万円となります。
しかし、「基礎控除で38万円が差し引かれる」ため、雑所得はゼロとなり、税金はかかりません。38万円を超える利益があった時には、38万円を超えた分に対して税金がかりますので、確定申告が必要となります。
課税対象額=雑所得(仮想通貨利益)50万円-基礎控除38万円=12万円 →課税される
上記のようなことから、
「給与収入があり、かつ仮想通貨取引を行っている人は利益が20万円を超えた時」
「収入が仮想通貨の利益のみの人は利益が38万円を超えた時」
に、確定申告の義務が発生するということになります。
注意5 税金が払えない?翌年2月の税金支払い時までしっかりお金をとっておこう

冒頭で、仮想通貨に係る税金は累進課税方式により計算されることに触れました。
最高税率が45%と高く、実際にはこれに住民税10%も加算されるため、最高55%という計算になります。
投資の楽しみと言えばハイリターンで、価格高騰した2017年には実際に億単位で儲けを出した人もいるとかいないとか。
しかし、高額利益の後には高額な税金の支払いがついてまわるのです。まとまったお金が手に入ったと浮かれ、車や家を買ったり派手な生活を続けてしまうと、いざ納税時期に十分なお金が残っていないということになりがちです。
ちなみに、税金に関しては自己破産をしても免責になりません。未払いのまま放置しておくと財産の差押えとなりますが、相談によっては猶予期間を設け分割払いとしてもらえる可能性もあります。
注意6 税金が払えない?別の仮想通貨に変換した時点で税額確定!

仮想通貨の利益は、日本円に換金した時はもちろんその時点で確定しますが、別の仮想通貨に交換した時点でも、その瞬間に確定され税金が発生します。
ここで注意してほしいことは、別の仮想通貨に変換し、その後その返還した仮想通貨が暴落しても、考慮してもらえないということです。
例えば、ビットコインで5000万円の利益を出し別の仮想通貨を購入した場合、変換した時点で以下の税金が課税されます。
住民税:5000万円×10%=500万円
合計 2270万4千円
このように、5000万円の利益のうち2270万円あまりが税金としてとられるため、手元に残る金額はかなり少ないことがわかります。
年が明けて5000万円で交換した仮想通貨が暴落し、例えば1000万円になってしまったといっても、すでに確定した税額は変更されません。
そうなると、
支払うべき税金:2270万4千円
差額 :1270万4千円
ということになり、1270万4千円が持ち出しとなり、税金の支払いが困難という結果に陥ってしまうのです。
まとめ 仮想通貨取引を始める前に理解を深めよう

仮想通貨取引は大きなブームであり、今後の成長が期待される市場です。
しかし、ハイリスクハイリターンの投資であることは間違いありません。
仮想通貨で成功するために、まずはその仕組みから税金対策まで、メリットデメリットについてしっかりと理解を深めることが必要不可欠です。