仮想通貨取引が一大ブームとなっています。
大きな利益を得る人も少なくない仮想通貨取引ですが、利益について回るものが税金です。
仮想通貨に係る税金は確定申告により自己申告をしますが、その性質からどの時点で税金が発生しているのか?というわかりにくさがあります。
そこで今回は、仮想通貨の税金がどの時点で発生するのか、解説していきます。
目次
仮想通貨の利益にも税金がかかる

2017年に一大ブームを巻き起こし、価格高騰により億り人の誕生を導き出した仮想通貨。
国税庁も、この新規ビジネスの動きに注目し、次々に税制について通達を行っています。
同2017年には、「仮想通貨の利益は雑所得として扱う」という正式発表を行いました。
一般的なサラリーマンの副業や、学生、主婦などの趣味やアルバイト代わりとしての取引に関しては、雑所得として取り扱われます。
ただし、事業用資産として仮想通貨を保有したり事業用決算に利用するなど、事業所得として扱われる場合もあります。
所得税法上では、所得の内容を給与所得、不動産所得、退職所得、山林所得、事業所得など計10種類に分けています。
雑所得はそのうちの一つで、基本的に「総合課税」の対象です。
総合課税とは、一旦区分された所得の金額をひとまとめにして税額を計算するものです。
ほかの所得とは合算せず分類したまま税額を計算する「分離課税」の対象となるものもあります。
総合課税では累進課税方式により税額の計算がなされ、所得が多いほど税率が上がる仕組みとなっています。
仮想通貨取引により急激に大きな利益を得る人もいますが、そのような場合、大金が手に入ったと喜ぶのもつかの間、後々高額な税金に驚くということも少なくありません。
どのくらいの税金がかかるのかを知るために、利益額をしっかり把握しておく必用があります。
煩雑な仮想通貨取引

仮想通貨取引はある意味煩雑です。
仮想通貨の種類は数多く、取引所も世界中に存在しています。
取引自体も、仮想通貨の購入から売却、別の仮想通貨への変換など、様々な方法があります。
複数の仮想通貨を利用している人の中には、今現在合計でどのくらいの利益が出ているのか、常に明確にすることは難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、利益を明確にすることは仮想通貨取引を行う上では重要です。それは、後々納税を行うために必要不可欠な情報だからです。
税金が発生するタイミング=利益を確定したタイミング」なのです。
税金が発生するタイミングを知ろう

税金が発生するタイミングは、利益が確定する時です。
仮想通貨の利益確定のタイミングはいくつもあり、様々なパターンがあります。
どの時点で利益が確定し税金が発生するのか、頭に入れておきましょう。
手持ちの仮想通貨を日本円に換金したとき
手持ちの仮想通貨を日本円に換金したとき、購入時よりも値が高ければその値上がり分が利益となります。
例えば、100万円で購入した仮想通貨を、価格が150万円に上がった時に換金すると、利益は50万円です。
利益が発生した時点、すなわち換金した時点で、税金が発生しています。
日本円に換金した金額が購入時よりも低い場合には損失となり、税金は発生しません。
手持ちの仮想通貨が値上がりしたところで、別の仮想通貨に交換したとき
手持ちの仮想通貨を別の仮想通貨に交換したときには、その手持ちの仮想通貨を売却したものとして考えます。
100万円で購入した仮想通貨が120万円に値上げしたときに、全てを別の仮想通貨に交換すると、その時点で20万円の利益が確定されます。
「仮想通貨→仮想通貨→日本円」という取引を行うと、日本円に換金したときだけに税金がかかると考えがちですが、この取引では2回利益が確定しています。すなわち、2回税金が発生しています。
仮想通貨同士の交換は比較的容易で、さらに保有しているだけでは税金がかからないということを混同し、「年末に翌年値が上がりそうな仮想通貨に交換して保有しておこう」という人もいます。
しかしそうすると、この時点で利益が確定していまい、当年の税金が発生していますので注意が必要です。
手持ちの仮想通貨を使って決済を行ったとき
仮想通貨で物を購入するなど決済を行った時も、決済した時点で利益が確定します。
例えば、100万円で購入した仮想通貨で120万円の買い物をして決済をすると、差額分20万円の利益が発生したことになります。
直接的に日本円に換金はしていなくても、一旦日本円に換金してから購入をしたという考え方となります。
物品購入で仮想通貨を利用すれば税金がかからないという説もありますが、そのようなことはありません。
盲点となりやすいので注意が必要です。ちなみに、国税庁が発表している商品購入の計算方法は以下です。
・商品価格-1コインあたりの取得価格×支払いコイン枚数=所得金額(利益)
マイ二ングで仮想通貨を得たとき
マイニングで仮想通貨を取得した時には、取得した時点ですでに利益が発生しています。
取得した仮想通貨の時価から必要経費を指し引いた分が、利益額となります。必要経費には、コンピューターを使うための電気代、セミナー参加費、参考書代などが認められます。
例えば、必要経費30万円を要し、マイニングで50万円の仮想通貨を得たとき、50万円-30万円で、20万円の利益です。
また、マイニングで得た仮想通貨を日本円に換金した時、その他の仮想通貨に交換した時には、上記と同じ考え方で、取得した時の時価との差額が利益となります。
例えば、マイニングで得た仮想通貨50万円を日本円80万円に換金したとき、80万円-取得価格50万円で、30万円の利益となります。
ハードフォーク(分裂・分岐)で仮想通貨を得たとき
ビットコインの分裂などにより自動的に付与される仮想通貨があります。
これらは、取得価格がゼロ円とみなされます。
そのため、日本円に換金したり、別の仮想通貨に交換したときには、全額が利益、すなわち課税対象額となります。
損失が出たとき

仮想通貨の利益は税法区分の「雑所得」に入り、さらに「総合課税」です。
総合課税のため、仮想通貨の利益は給与など他の所得金額と合算して、税額を計算します。そのため、所得額が大きくなり税率が上がりやすい傾向にあります。
ところが、雑所得は、他の区分の所得と「損益通算ができない」というルールです。
例えば仮想通貨で100万円の損失が発生したとき、給与所得などとプラスマイナスを相殺するということが認めらていないのです。
この場合、他に雑所得がなければマイナス分は切り捨て、「雑所得ゼロ円」として申告します。
ただし、雑所得内での「内部通算」は可能となっています。
例えば、2種類の仮想通貨取引を行い、一方で利益500万円、もう一方で損失200万円が発生した時、500万円-200万円=300万円となり、300万円にのみ課税されます。
仮想通貨で200万円の損失が発生し、原稿料などその他の雑所得が500万円である場合でも、同じ様にプラスマイナスを相殺し、差額300万円が雑所得の総額として課税対象となります。
まとめ

仮想通貨取引で得た利益には税金がかかります。
そのため、どのくらいの利益を得たのか把握しておく必用があります。
仮想通貨取引は細かな作業とも言え、利益確定のパターンもいくつもありますが、忘れてはいけないことは「利益確定の度に税金が発生している」ということです。
実際に換金していなくても税金が発生することを忘れないようにしましょう。