仮想通貨取引の一つに、仮想通貨FXがあります。
通常のFX(外国為替証拠金取引)と似たような仕組みの取引で、リバレッジを効かせ少ない資金で大きな利益を上げることができます。
この仮想通貨FXに係る税金はどうなるのでしょうか?通常のFXのように申告分離課税となるのでしょうか?仮想通貨FXの仕組みと共に解説していきます。
目次
仮想通貨の取引方法はいくつかある

仮想通貨取引というと、仮想通貨を売買する現物取引が一般的ですが、実は仮想通貨取引には大きく分けて3種類あります。
「現物」「FX」「先物」です。
現物取引は一般的に広く行われている取引で、実際に仮想通貨の売買を行います。安い時に買って高い時に売ることで、その差額を利益とするものです。
これに比べ仮想通貨FXは、外国為替FXと似た考え方で、将来の値上がりや値下がりを予測して行う取引です。
買い注文または売り注文を出すことで未決済状態の仮想通貨を保有し、それを決済することで価格変動による差額分が利益となる証拠金取引です。
仮想通貨自体を購入し保有することはなく、買い⇒売りで発生した差額を利益として日本円で受け取ります。
仮想通貨の先物取引は商品や株式の先物取引と同じ様に、将来の価格を予想して行う取引です。
将来の定められた期限が来た時にあらかじめ定めた価格で購入します。購入時の時価が上がっていれば、その差額が利益となります。
仮想通貨FXの大きな特徴

「買い+売り」がセットの取引
仮想通貨FXは、仮想通貨を購入して保有することはありません。
仮想通貨を売り買いし、その間の値動きによる差額を利益として、日本円で得る取引です。
そのため、「買い+売り」という2つの取引が完了してはじめて決済されます。
現物取引では、「買う」という取引、「売る」という取引それぞれが独立しており、買った仮想通貨を保有し資産とすることもできますし、価格が上がった時に日本円に換金しその差額を利益として受け取ることもできます。
また、FXの場合は、「売り」から始めることができるという大きな特徴もあります。
これを「空売り」と言います。「安く買って高く売る」ことで利益が出ることはわかりますが、「高く売って安く買い戻す」ことで利益を出すという考え方です。
取引をしたい仮想通貨の価格が下がることが予想される時に、まずその仮想通貨を売りに出し、後に同じ仮想通貨を買い戻します。
例えば、100万円で1ビットコインを売り、その後1ビットコインの値段が80万円に下がった時に買い戻せば、その差額20万円が利益として手元に入ることになります。
現物取引では「安く買って高く売る」ことで儲けを出しますので、通貨の価格が上昇していなければ利益がでません。
しかしFXでは「高く売って安く買い戻す」ことができるため、通貨の価格が下降時でも利益を出すことができます。
レバレッジが効く
レバレッジとは、「取引会社に預けた証拠金の数倍~数十倍の金額で取引ができる」というものです。
少ない資金でも大きな取引ができるというメリットがあり、取引上ではレバレッジ○○倍という言い方をします。
例えば、資金が少なく証拠金に10万円しか出せない人でも、10倍のレバレッジをかければ100万円の取引ができます。
ここで注意したいのですが、FXではあくまでも売買における差額が利益として手元に入るわけですから、100万円の仮想通貨を手に入れるという意味ではありません。
100万円分の仮想通貨を買い、110万円で売ることで、10万円の利益が手に入るわけです。
もし10倍のレバレッジがなければ、10万円の仮想通貨を買い、11万円で売ることしかできず、利益は1万円に限られるわけです。
損失も大きい
このように、レバレッジが効くことで、少ない資金で大きな利益を出すことができるFXですが、当然損失が出た際にもレバレッジがかかります。
レバレッジが10倍であれば損失も10倍となりますので、ハイリスクハイリターンということを覚えておきましょう。
仮想通貨FXの税金も総合課税の雑所得

さて、仮想通貨の現物取引のおいては、その利益にかかる税金は総合課税の雑所得に分類されます。それでは、仮想通貨FXで得た利益はどのような扱いになるのでしょうか。
これについては国税庁HPに、「仮想通貨の証拠金取引による所得については申告分離課税の適用はなく、雑所得の総合課税により申告」と記されています。
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf
通常のFX(外国為替証拠金取引)では雑所得の申告分離課税となっていますので、仮想通貨FXも申告分離課税では?との期待もありましたが、残念ながら申告分離課税は適用されません。
参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1522.htm
総合課税の雑所得ではいくら税金を取られるか?

総合課税とは、給与所得、雑所得、不動産所得などの金額を一つにまとめて課税する方法です。
もし、サラリーマンが副業として仮想通貨FXを行っていれば、給与所得と仮想通貨FXによる利益を合算した金額で税金が計算されます。
この時、税率がどのくらいになるか?というと、それは所得の金額によるのですが、所得が多ければ多いほど税率が高くなる累進課税方式が取られており、最高45%という高額なものです。
一定の所得金額を超えると税率がアップするようになっていますので、利益が大きくなる可能性の高い仮想通貨FXでは、20%だった税率が突然33%に上がるということも考えられます。
2017年には仮想通貨の高騰により億り人が誕生しましたが、中には多額の税金に泣かされた人もいるのではないでしょうか。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
税額計算の例

①収入が仮想通貨FXの利益だけで、その利益が300万円の場合
⇒300万×10%-97,500円(控除額)=202,500円
②収入が仮想通貨FXの利益だけで、その利益が1300万円の場合
⇒1300万円×33%-1,536,000円(控除額)=2,754,000円
③収入が仮想通貨FXの利益だけで、その利益が5000万円の場合
⇒5000万円×45%-4,796,000円(控除額)=17,704,000円
※実際にはここに住民税10%が加わるため、さらに負担が大きくなります。
④給与所得500万円のサラリーマンが、仮想通貨FXの利益300万円を得た場合
500万円の給与所得にかかる税金=500万円×20%-427,500円(控除額)=572,500円(会社で源泉徴収済み)
ここに、仮想通貨FXの利益300万円が加わると、合計所得金額=500万円+300万円=800万円となる。
800万円に対する税率=23%
⇒すでに源泉徴収されている給与に対する税金も含め、20%でなく23%で計算し直すことになる。
所得税の総額=(500万円+300万円)×23%-636,000円(控除額)=1,204,000円(内572,500円は源泉徴収済み)
雑所得内での損益通算可能

仮想通貨FXは、ハイリスクハイリターンの取引です。少ない資産で大きな利益を上げることができますが、その分損失も大きくなる可能性があります。
しかし、雑所得に分類される仮想通貨FXに係る税金は、損失が出た場合、その損失分を給与所得などの他の所得と損益通算することができません。
雑所得では、マイナス分は切り捨てとなり、雑所得額ゼロで申告します。プラスの所得は他の所得と合算して課税されるのに、マイナス分は考慮されないという大変厳しい税制となっています。
ただし、雑所得内での損益の通算は可能です。これを内部通算と呼びます。
仮想通貨FXで損失が出た、アフェリエイトなどその他の雑所得があるという場合には、仮想通貨FXでの損失とアフェリエイトの利益を相殺した金額で申請できます。
複数の仮想通貨FX取り引きを行っていても同様です。
1年間の仮想通貨FXの損益をすべて通算して、雑所得として申告できます。
まとめ

仮想通貨FXは現物取引とは異なる特徴のある取引方法です。
レバレッジが効くことから少ない資金で大きな利益を得るというメリットがあり、利益額も大きくなる可能性があります。
しかし、それに係る税金は総合課税の雑所得であることから、大きな利益を得ながら高い税金を取られたという残念な結果になることもあります。
FXの知識と同じに、税金に関する理解も深め、上手に利益を上げていきましょう。