仮想通貨に大事な資金を投資している人は、投資した元本だけは失いたくないと考えるものです。
そのために、「原資を抜く」という方法があります。10万円を払って投資し、値が上がった時に、その原資分10万円を受け取るわけですが、この時税金はかからないのでしょうか?
仮想通貨の税金は原資を抜けば大丈夫なのか?解説していきます。
目次
原資を抜くとは?

仮想通貨の特徴の一つとして、価格の変動が激しいことが知られています。
急な右上がりで上昇し続け、かと言えば突然大幅に下落するということもよくあることです。
現にビットコインの価格は、2017年に一気に13倍となりながら、2018年の年初には大暴落を起こし、悲鳴を上げた人も多かったようです。
このように、好調な時も多いながら、一つ間違うと大きな損失となる可能性があるため、仮想通貨取引を行う人の中には、「せめて元本分だけでも確保しておきたい」と考える人も多いのです。
そこで、仮想通貨の価格が上がったときに、「投資した原資と同じ金額分を日本円として手元に戻しておく」ということが行われています。
原資分だけでも手元に戻って入れば、万が一仮想通貨の価格が下降続きになっても安心感があるわけです。
具体的に原資を抜くとはどのようなことなのか?

それでは、具体的に「原資を抜く」という方法について説明してみます。
例えば、100万円で購入したビットコインが値上がりして1000万円になったとしましょう。
ここで、元本分だけは手元に戻しておこうと、「100万円分を日本円に換金」しておくのです。
自分の大事な資金100万円、投資のためとはいえゼロにはしたくない!今手元に戻しておけば、万が一値が暴落しても元本の100万円まで失うことは避けることができるというわけです。
仮想通貨の利益には税金がかかる

さて、ここで思い出してほしいのですが、仮想通貨の利益には税金がかかります。
利益がいつ発生するか?というと、「利益確定したとき」です。
利益」とは、購入時点での仮想通貨の価格と売却した時点の仮想通貨の価格の差額を言い、利益の確定がいつ起こるか?というと、換金、交換、決済、マイニングをしたときです。
上記の、【元本分だけは手元に戻しておこうと、「100万円分を日本円に換金」しておく】ということは、まさに換金ですので、税金が発生します。
この場合、
「100万円で購入したビットコインが1000万円に値上がりしたときに、100万円だけ換金した」
ということですので、値上げ率は10倍です。
さて、ここがポイントなのですが、日本円に換金した100万円に当たる原資は、「10万円」とみなされます。
しつこいようですが、100万円の原資は100万円ではないわけです。
そうなると、100万円-10万円(原資)=90万円(利益)となります。
つまり、換金した100万円のうち、利益とされる90万円には税金がかかるということになります。
仮に、収入が仮想通貨によるものだけとすると、90万円に対する所得税率は5%です。
90万円×5%=4万5千円
さらに、住民税10%もかかります。
90万円×10%=9万円
合計13万5千円が、税金として徴収されます。
仮想通貨利益の税金は、総合課税として累進課税方式で計算されますので、金額が大きければ大きいほどその税率が上がり、手元に残る金額は減ってしまいます。
もしこれが、1000万円の原資で仮想通貨を購入し、値上げした後に1000万円を換金したとなると、33%+10%が税金として取られてしまうわけです。(厳密にはそこから控除額が差し引かれます)
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
原資を抜けば大丈夫???

このように、仮想通貨取引を行う上で、将来的な価格の暴落を懸念して、あらかじめ自分が投資した原資金だけは手元に確保しておきたいという意味で「原資を抜いておく」という方法が行われています。
しかし実際には税金の問題があり、「100%原資を回収した」ということにはなっていないことがわかります。
「100万円で購入した仮想通貨が値上がりした⇒原資分の100万円分だけ換金 ≠ プラスマイナスゼロ」とはなっていないのです。
給与所得があるときにはさらに高い税率に!?

仮想通貨取引を行う人の中には、サラリーマンなど他の収入があるという人も多いでしょう。
仮想通貨に係る税金は雑所得に分類され、他の所得額と合算して計算される総合課税です。
その税率計算方式は、上記でも触れたように累進課税方式で、所得が多い人ほどたくさん税金を支払うしくみになっています。
例えば、給与所得500万円のサラリーマンが仮想通貨取引を副業として始め、500万円の利益をあげたとすると、
合計所得金額=給与所得500万円+雑所得500万円=1000万円
となり、1000万円に対応する税率33%が適用され、納税額が決まってきます。
もともと給与所得500万円だけが収入であった時には20%の税率で源泉徴収されています。
しかし、仮想通貨で1000万円の利益を上げたことにより、13%も税率が上がり、給与所得に対する税金も不足分を追加で支払うことになります。
もちろん、仮想通貨の利益1000万円に対しても33%の税率が適用されます。
勘違いしやすいこと

「原資を抜いておく」ことに関して勘違いしやすいことは、
「100万円を原資として仮想通貨を購入、10倍に値上がりしたときに原資分の100万円を売却した。100万円で買って100万円で売ったから、プラスマイナスゼロ、利益なし税金なし!」
こうはなりません!
「原資(100万円):値上げ後の金額(1000万円)=換金した金額に対する原資(10万円):換金した金額(100万円)」です。
原資を抜くときには「原資100%回収とはならない」「利益を確定したときには税金がかかる」ことを忘れないようにしましょう。
ちなみに、仮想通貨の利益がでたときには確定申告で納税を行います。
原資を抜いて利益が出た時には、確定申告を必ず行いましょう。
原資を抜いた=プラスマイナスゼロと勘違いし確定申告をせずにスルーし、翌年また利益が出て確定申告をしたときに、「去年はどうしたのですか?」ということになると厄介です。
税務署は仮想通貨取引に目を光らせていますし、取引所や銀行への情報開示を請求することもできます。
数年泳がせておいて、忘れたころに追徴課税をたっぷりとかけるということもありますので、甘く見てはいけないのです。
「原資を抜いても税金を払う」
ということを肝に銘じて、忘れずに確定申告をしてください。
まとめ

価格変動が激しい仮想通貨取引では、突然その価格が暴落することもがありがちですが、そのような時せめて初期投資に使った原資だけは失いたくないということで、「原資を抜く」という方法が行われています。
原資となった金額を換金して手元に戻すわけですから、仮想通貨の価格が下降していても安心感を得ることができます。
しかし、原資を抜くということについて勘違いしやすいことに、原資100%の回収にはならないという事実があります。
それは、税金が絡んでくるためです。
仮想通貨取引では、原資を抜いても税金がかかることを忘れずに、確定申告を行いましょう。