もう安全?仮想通貨7社が行政処分を受けた3つの原因と今後の対策

もう安全?仮想通貨7社が行政処分を受けた3つの原因と今後の対策

今年2018年3月、仮想通貨7社が金融庁から行政処分を受けたことをご存知ですか?

この7社はセキュリティー対策などが不十分だったために、行政処分を受けました。

7社のうち2社は業務停止処分にまでなっています。

今回は、これらの仮想通貨7社がなぜ行政処分を受けることになったのか、その3つの原因と今後の対策についてまとめます。

運営・管理体制や今後の動向を知るための参考にしてください。

仮想通貨7社に下された行政処分とは?

仮想通貨7社に下された行政処分とは?

まず、仮想通貨7社に下された行政処分の内容を詳しく見てみましょう。

改正資金決済法に基づき2社に業務停止命令

行政処分を受けた7社のうち、FSHOとビットステーションには、改正資金決済法に基づき、業務改善命令と業務停止命令が出されました。

資金決済法とは、正式な法令名を「資金決済に関する法律」と言い、元々は情報技術の発展によるSuicaなど電子マネーでの決済に関するルールを定めたものでした。

その法令にビットコインなど仮想通貨での決済に関する新しいルールを加えたものが改正資金決済法です。

【FSHOが業務停止命令を受けた理由】

複数回にわたる高額の仮想通貨の売買にあたり、取引時確認及び疑わしい取引の届出の要否の判断を行っていない
社内規則等に基づいて業務が運営されているとはいえない
ex.)取引時確認を検証する態勢が整備されていない、職員向けの研修を未だ行っていないなど
(【出典】関東財務局「FSHO株式会社に対する行政処分について」)

【ビットステーションが業務停止命令を受けた理由】

100%株主であった経営企画部長が、利用者から預かった仮想通貨(ビットコイン)を私的に流用していた事実が認められた
(【出典】東海財務局「ビットステーション株式会社に対する行政処分について」)

5社には業務改善命令が出された

行政処分を受けた7社のうち残りの5社、テックビューロ、GMOコイン、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジ、コインチェックには、業務改善命令が出されました。

業務改善命令の具体的な内容については、次の「仮想通貨7社に金融庁が行政処分を行った3つの理由」でまとめます。

仮想通貨7社に金融庁が行政処分を行った3つの理由

仮想通貨7社に金融庁が行政処分を行った3つの理由

仮想通貨7社が金融庁から行政処分を受けることになった背景には、2018年1月にコインチェックが外部から不正アクセスを受け、約580億円分の仮想通貨NEMを流出させてしまった事件があります。

金融庁は他にもコインチェックと同じリスクを抱えたまま運営している業者が存在している可能性があるとして、登録済みの業者16社のうち数社と、みなし業者全16社に立入検査を行いました。

その結果、7社が行政処分を受けることになったのです。行政処分の理由を3つまとめます。

内部管理が十分ではない

内部管理が十分でないというのが理由のひとつです。

仮想通貨の取引市場が昨年から急激に拡大しているのに伴い、業務内容も大幅に増加しました。

それにも関わらず、内部監査を実施していない、法令遵守をしっかり行えるようチェックする経営管理態勢が整備されていないといったことから行政処分が下されました。

特に内部管理を指摘されたのは、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジ、コインチェックの3社です。

また、利用者財産の適切な管理態勢が十分でないことも挙げられます。

特に利用者財産の管理を指摘されたのは、FSHO、ビットステーション、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジの4社です。

セキュリティー対策が不十分である

セキュリティー対策が不十分であるのも理由のひとつです。

システム障害や不正出金、不正取引などといった問題が多く発生しているにも関わらず、根本的な原因の分析が不十分で再発防止策も講じていないことから行政処分が下されました。

特にセキュリティー対策を指摘されたのは、テックビューロとGMOコインの2社です。

マネーロンダリング対策が不十分である

マネーロンダリング対策が不十分であるのも理由のひとつです。

麻薬取引や脱税などといった犯罪行為によって得たお金を仮想通貨を経由させてまた換金することでお金の出所をわからなくさせるマネーロンダリングが、近年横行しています。

こういったマネーロンダリングやテロ資金供与といった不正行為に仮想通貨が利用されるというリスクの認識が甘く、対策を講じていないことから行政処分が下されました。

特にマネーロンダリング対策を指摘されたのは、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジ、コインチェックの3社です。

行政処分を受けた仮想通貨7社とは

行政処分を受けた仮想通貨7社とは

次に、行政処分を受けた7社とはどんな企業なのか、また行政処分後の現状についてもまとめます。

FSHO(横浜市)

FSHOは、2014年10月設立の仮想通貨交換業のみなし業者でした。

仮想通貨交換業のほか、電子ギフト券の買取なども行っていました。

2018年3月の業務停止命令以後、業務改善を履行していないとして、4月に2度目の業務停止命令を受けました。

その後も改善が見られないことから、6月に金融庁から登録拒否処分が出されています。

ビットステーション(名古屋市)

ビットステーションは、2016年8月設立の仮想通貨交換業のみなし業者でした。

2018年3月の業務停止命令を受けて、仮想通貨交換業者への登録申請を取り下げ、仮想通貨交換業を廃業しています。

テックビューロ(大阪市)

テックビューロは、2014年6月に設立された仮想通貨交換業者です。

仮想通貨取引所のzaifや「実ビジネスのブロックチェーン導入を支援するCOMSA」のサービスを展開しています。

テックビューロは、2018年3月の業務改善命令以後改善の確認を続ける中でまだ不十分な点が見つかり、6月にも2度目の業務改善命令を受けています。

また、2018年9月にテックビューロが保有していた仮想通貨が不正に外部へ送信され、顧客から預かっている資産が流出するという事故が発生したため、9月にも3度目の業務改善命令を受けました。

これらのことから、仮想通貨取引所zaifの事業をフィスコ仮想通貨取引所に譲渡することが決まっています。

公式サイト:テックビューロ株式会社

GMOコイン(東京・渋谷)

GMOコインは、2016年10月に設立された仮想通貨交換業者です。

東証一部上場のGMOインターネットグループのグループ企業というのが特徴です。

2018年3月の業務改善命令以後、3月22日に業務改善計画を提出したことを報告しています。

公式サイト:GMOコイン

バイクリメンツ(東京・港)

バイクリメンツは、2015年12月に設立された仮想通貨交換業のみなし業者でした。

ビットコインの購入ができる取引所「Lemuria」を運営していました。

2018年3月の業務改善命令以後、改善に取り組む中で万全の態勢を整えることが難しく、仮想通貨交換業者への登録申請を取り下げ、サービス停止に向けて動いています。

ミスターエクスチェンジ(福岡市)

ミスターエクスチェンジは、2017年8月に設立された仮想通貨交換業のみなし業者です。

2018年3月の業務改善命令以後、仮想通貨交換業者への登録申請を取り下げ、サービス停止に向けて動いています。

コインチェック (東京・渋谷)

コインチェックは、2012年8月に設立された仮想通貨交換業のみなし業者です。

2018年3月の業務改善命令以後、3月22日に業務改善計画を提出したことを報告しています。

公式サイト:コインチェック

仮想通貨の取引業者に今後求められるもの

仮想通貨の取引業者に今後求められるもの

仮想通貨が普及し、行政も取引業者の健全な運営を観察する中、今後取引業者に求められるものとは何でしょうか。

次の4つが挙げられます。

システム管理態勢を強化する

システムの管理態勢を強化することが求められます。

これは、主にセキュリティーの問題です。

1月にコインチェックがNEMを流出した事件や9月にテックビューロが70億円相当の仮想通貨を流出した事件からもわかるように、外部からの攻撃によるシステムリスクへの対策は万全とは言えない状況です。

利用者が安心して自己の資産を預けられるようシステム管理態勢を強化することは必須と言えます。

資金洗浄対策を行う

資金洗浄(マネーロンダリング)対策を行うことも求められます。

仮想通貨によるマネーロンダリングの被害額は2018年中に過去最高になると予想されています。

このような現状から、仮想通貨が不正行為に利用されるリスクへの対策が不可欠です。

社内管理の徹底を行う

社内管理の徹底を行うことが求められます。

ビットステーションのように預けた資産を私的に流用したケースもあり、内部監査を含め社内の管理態勢、ひいては経営態勢を整えることが必要です。

もしもの時に利用者の保護を最優先で行う

もしもの時に利用者の保護を最優先で行うことが求められます。

もちろんシステムリスクに対する管理態勢や社内管理態勢を整え、利用者から預かった資産を不正に流出・流用できないようにすることも利用者の保護につながりますが、万が一不測の事態が起こった場合には利用者の保護を最優先で行えるような態勢作りも重要です。

仮想通貨7社の行政処分のまとめ

仮想通貨7社の行政処分のまとめ

この記事では、仮想通貨7社の行政処分について、処分を受けた理由と現状、今後求められる対策をまとめました。

3月の行政処分以降、4月と6月にも他の仮想通貨交換業者に対して業務改善命令が出されています。

いずれもシステムリスクやマネーロンダリングに対する態勢構築、社内管理態勢の構築、利用者保護に関する態勢構築が求められています。

これまでの行政処分により、今後は利用者がより安心して運用できる環境が整ってくると考えられます。

これから仮想通貨を始めようと思っている方は、行政処分と改善内容を取引所選びの参考にしてはいかがでしょうか。